反動形成とは
精神分析理論において、反動形成(ドイツ語:Reaktionsbildung)とは、不安をもたらすあるいは受容できないと認識される感情や衝動が、直接反対する傾向の誇張によって習得される防衛機制のことです。
反動形成は神経症的防衛機制のレベル3に属し、解離、変位、知的化、抑圧と同じレベルです。
反動形成の歴史
防衛機制の概念は、1800年代後半にジークムント・フロイトが精神分析理論の一環として提唱したのが始まりです。
防衛機制に関する議論はフロイトが始めたものですが、娘のアンナ・フロイトは、1936年に出版した代表的な著書『自我と防衛機制』の中で、10の重要な防衛機制を提唱し、この考えをさらに前進させました。
その10個の防衛機制のひとつが反動形成です。
日常生活における反動形成
反動形成は、その人が自分の信念に非常に固執していることが多いため、識別が困難な場合があります。
そして、自分の信念に熱中している人のほとんどは(反動形成ではなく)本物であることを認識しておくことが重要です。
しかし、人間関係や政治の世界など日常生活の中でも反動形成が起こる場合もあります。
人間関係において反動形成が起こるひとつの方法は、一方の人が相手に対する愛情という感情を不快に感じている場合です。
反動形成は、相手を抱きしめる代わりに相手を切り離したり、言い争ったり傷つけたりすることにつながるかもしれません。
これは、子供のころによくあった、からかいや髪を引っ張るなどして注意を引くことで、ある子供が別の子供に恋心を抱いていることを示す大人版の行動です。
不快な欲求を公然と激しく抗議する傾向は、時に性やセクシュアリティに悩む人たちに現れます。
例えば、同性愛に反対すると説教する政治家でありながら自分も同性愛者であったり、児童虐待の防止法を提唱する政治家でありながら自分も児童を性的虐待していたりする例などがあります。
ポルノに関する道徳的・宗教的信念の対立が、ポルノ依存症であることを自認させる一因となっている可能性があることが、研究により示されています。
このような状況には多くの要因がありますが、ひとつには、セクシュアリティの側面に対する不快感が反動形成につながるということがあるかもしれません。
反動形成の研究
すべての防御機構が研究の精査に耐えられるわけではありませんが、多くの研究が反動形成の説得力のある証拠を示しています。
1998年に発表された反動形成に関する研究のレビューで、バウマイスター、デール、ソマーは、フロイトが期待したように、人々が反動形成を示すこと、そしてそれが自我を防衛することが研究で証明されていることを明らかにしました。
彼らのレビューによると、自己に関する否定的なフィードバックに対する反応からさまざまな形の偏見まで、あらゆるものを調査した結果、人々は自尊心が脅かされると、自分の本心とは反対のことを信じると主張することで反応することが明らかになったのです。
ある研究では、平等主義的な考えを持つ白人の参加者が、実験の中で黒人に対する人種差別的な考えを持っていることを指摘されると、人種差別を指摘されなかった参加者よりも、研究室を出た後に黒人の行商人に多くの寄付をするようになったのです。
その結果から、研究者は反動形成が「自尊心の脅威に対するより顕著で一般的な反応のひとつ」であることを示唆しました。
最近の研究では、反動形成の証拠が続々と得られています。
例えば、2012年に行われたエインシュタインの研究では、参加者の暗黙の性的指向を測定するテストを用い、参加者に自分の性的指向を明確に示すように求めました。
研究者らは、参加者の暗黙の性的指向と明示的な性的指向に食い違いがある場合、参加者はゲイと自認する人に敵意を持って見る傾向があることを発見しました。
これらの参加者は、反ゲイ政策を支持する傾向がありゲイ個人に対するより高い暗黙の敵意が見られ、反動形成の強力な実証となったのです。
反動形成の危険性
反動形成の概念は、外的脅威や内的不安に対する反応を説明するために用いられてきました。
ストックホルム症候群と呼ばれる現象では、人質や誘拐の被害者が自分たちを完全に支配している恐れられ憎まれた人物に「恋」をしてしまいます。
同様に、ナチスの収容所では無力で弱い立場の収容者が看守の間で「お気に入り」を作り、看守が捨てた物まで集めてしまうという逆説的な報告も存在します。
反動形成のメカニズムは、しばしば強迫神経症と同じ特徴を示します。
このメカニズムが強くなると、特に自我の形成期にそれが永久的な性格的特徴になることがあります。
これは強迫性人格障害や強迫性パーソナリティ障害の人によく見られます。
このことは、反動形成の定期的な使用が常に強迫観念的であることを意味するのではなく、強迫観念的な行動につながる可能性があることを意味するのです。
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